中空土偶とは

愛称は”カックウ”。北海道唯一の国宝

改めて中空土偶をスケッチしてみました。実物はもっと素敵です・・・。私が大好きな中空土偶(愛称「カックウ」)は、北海道函館市の南茅部地区(旧南茅部町)で1975年の夏、農作業をしていた地元の主婦小板アエさんによって発見されました。

畑でイモを掘ろうとしてクワを入れたところ、何かにあたり、掘り出してみると“ひとがた”をした焼き物が出てきたのだそうです。

この話をいろんな本で読むたび、当時の様子を想像してなんともワクワクします。その後、縄文時代の土偶であることがわかりました。発見された場所から「茅」、中空土偶の「空」をあわせて「茅空(カックウ)」の愛称で親しまれています。

カックウの特徴はいろいろあるのですが、ここでは3つご紹介したいと思います。まず、女性的な表現が薄く、中性的であるということ。多くの土偶は妊娠中の女性の体のような表現がされているのですが、カックウはそのような表現が薄く、この中性的な表現は特徴的です。個人的には、太めの眉と立派な髭のような表現が心引かれます。

2つ目の特徴はとても大きいこと。高さは41.5cm、体が空洞の「中空」土偶では日本一の大きさです。実は、土偶には内部が空洞になっている中空土偶と空洞のない、土の塊状になっている中実土偶があります。

つまり、このサイトのテーマである「中空土偶」は製法の違いによる大きな土偶の分類の名称でもあるのです。ちなみに、製法の名称としての中空土偶は南茅部地区以外でも発見されています。例えば、町田市で発見された土偶頭部がよく知られています(こちらもとってもかわいいです)。

それから、3つ目は、壊れている部分が少ないこと。頭の上の髪と両腕は埋められる前に壊れていましたが、それ以外はそろっています。ほかにもいろいろと特徴はあるのですが、以上3つを挙げておきます。

また、上記のとおり造形的にも優れていることから、1999年には重要文化財に、2007年には国宝に指定されました。2008年の洞爺湖サミットで展示されたほか、2009年の大英博物館、2018年の東京国立博物館など国内外で展示されています。普段は2011年に完成した函館市縄文文化交流センター(函館市臼尻町551-1)に展示されています。

土偶と探す祈りの旅

左の作品は私が2013年縄文コンクールに応募したポスターです。ありがたいことに、優秀賞をいただき今も大切な思い出です。当時の応募用紙に記入した文章を引用します。

“鷲ノ木遺跡の環状列石にて、駒ヶ岳からの日の出を眺める中空土偶をイメージして描きました。渡島・胆振地域を旅して、縄文時代を生きた人々の祈りと力強さを身近に感じてほしいという願いを込めています。”

    

カックウはお墓から出土したと言われています。小さい頃はお墓と聞くとなんだか怖いイメージがありましたが、実家の祖父母が亡くなってからは意識ががらっと変わりました。

お墓は祖父母に会いにいける場所である気がします。小さい頃、叱られたこと、もっとあの時にちゃんと話を聞けばよかったなあと思うこと、いろんな思いがありますが、お墓に行けば今も変わらず見守ってくれていると確かに思うことができます。

縄文人もお墓でそんな思いを持っていたのかなと想像することもあります。縄文人の暮らしと今の私たちの暮らしではいろんなことが違いすぎるけれども、人として根底にあることは全然変わらないんじゃないかな、土偶を見に行くとき、つくるとき、そんな思いでいます。