中空土偶が好き

中空土偶が好き

こんにちは。サイトの制作者で管理人のキノコです。

夫婦で更新しているInstagramアカウント@kinokofusaiを見てくださっている人には、「キノコだよ」といつものキノコの口調でご挨拶しないと違和感があります・・・が、しばらくおつきあいください。(おつきあいいただきたいよ!)

Instagramでしばしば土偶の絵や粘土作品を載せていたのですが、今、このタイミングで「土偶が好きです」と言うのはどこか「今更感」があって、Webサイトを作ると決めたものの、ずっと「べつにやらなくてもいいんじゃないか?」というひっかかりがありました。

個人的な感覚として、"研究者や学芸員ではないけれど、土偶が好きな人"というのは、ずっといたのだろうけれども、2018年に東京上野で「縄文―1万年の美の鼓動」が開催されて以来、よい意味で一気に表に出てきたという印象があります。今まで土偶への愛をささやいていた人が堂々と愛を叫ぶようになったような・・・。土偶が多くの人に知られ、社会の教科書に載っていた、以上のイメージを共有されるようになったことで、話題にしやすくなったというのもあるのかもしれません。

土偶の展覧会と言えば、2018年の東京上野より前には、2012年に京都石山のMIHO MUSEUMで開催された「土偶・コスモス」展がありました。その当時、岐阜市で仕事をしていた私は、展覧会初日に休みをとって石山駅へ向かいました。普段はおそらく静かであろう石山駅に多くの人が集まり、美術館行きの送迎バスは満杯。急遽臨時バスが出され、私はその臨時バスに乗り込んで美術館へ向かったことを覚えています。

土偶のチャーミングさというか、不思議さが前面に伝わってくるような、何時間でもじっくりと見ていられるすばらしい展覧会で、本当に素敵でした。でも、この展覧会の直後には、2018年の東京上野の後の土偶ブームとは少し違って、やはり一部の土偶好きの間で「やっぱり土偶っていいよね」とささやいているような感じがありました。土偶グッズもこのときはさほど多くなかった印象があります。

やはりがらっと空気が変わったなと思ったのは2018年。

土偶や縄文にまつわる展示やイベントが行われると同時に、書籍、グッズがオンラインショップで気軽に買えるようになり、わざわざ遠くへ行かなくても土偶を身近に感じられるようになったのは喜ばしいことでした。

それなのに、どこか寂しい気持ちがありました。この寂しさはどこから来るのだろうと考えた時に、一つ浮かんだのは、土偶にまつわることを簡単に消費できてしまうことに対するモヤモヤ感でした。

  

日本の各地で出土した土偶は、時に一か所の博物館に集められます。一堂に会した土偶を一度に見られることやたくさんのかわいい土偶グッズを気軽に購入できることは嬉しい反面、やはり私は少し寂しい。

あれ・・・なんでだろう?そこで初めて、土偶の出土した土地の空気感、今その土地で暮らす人との出会い、自分で土偶をつくったり、描いたりして土偶と向き合う体験、そんなものまでひっくるめて好きだということ気づきました。

 

コロナ禍で「オンライン○○」が盛んなこの令和3年ですが、足を運んでしか感じることのできない土地の空気感、自分の手でつくって、表現してこそ感じられる気持ち、現地へ足を運んでグッズを買う喜びが確実にあるなあと噛みしめるこの頃です。

土偶の絵を描いたり、粘土をこねて土偶をつくっているとき、一万年も前を生きていた縄文人とのつながりを想像して、日常生活ではいろいろあるけど、大事なことは多分すごくシンプルなことなんだろうな、とポジティブな気持ちがわいてきます。

前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、これは私の大好きな中空土偶を中心に、土偶にまつわる旅や作品、購入した宝物を記録するサイトです。必要かと言われればわからないけれど、単純に好きなのでつくってみよう、という試みです。

土偶に出会って以来、函館には6年間で12回通いました。そこで出会ったもの、つくったもの、空気感、自分だけの「土偶体験」として残しておきたいなあ、と思ってつくったのがこのサイトです。

あの凛々しい眉、髭のような表現、分厚い唇、少し遠くを見るような目・・・これをつくった人はどんな思いで作ったのだろうかと考えるだけで、胸がいっぱいになります。私が何度も函館へ行くのも、中空土偶にまつわるいろいろなものを作るのも、ついグッズを買ってしまうのも、中空土偶をつくった縄文人とつながりを感じたいと願うからかもしれません。そして、今私と同じように土偶を作っているお仲間とのつながりも求めているのかなと思います。

もし共感してくださる人がいるなら、ぜひ足を運んで、中空土偶の出土した土地の空気感を味わっていただきたいと願っています。作品については、本物の土偶の色にとらわれず、イメージを大切に制作しています。楽しんでいただけたら嬉しいです。

令和3年3月18日